大阪高等裁判所 昭和24年(を)2744号 判決
被告人
中原実雄
主文
本件控訴を棄却する。
理由
本件控訴の理由は末尾添付の控訴趣意書の通りである。
第一点について
しかし原判決が証拠として採用している被告人の公判廷に於ける供述と被告人に対する司法警察員作成の昭和二十四年五月十一日附供述調書の記載によれば被告人は本件強盜の犯行前に共犯者の田中明からたのまれて友人石田武から匕首を借りうけて之を田中明に手渡した上現場屋外で見張りをしていたことが認められ更に被害者である渡辺いし及嵯峨美壽子に対する司法警察員作成の各供述調書の記載によれば被告人の共犯者三名は当日午後九時頃渡辺いし方に侵入するとすぐに家人に対し判示のような暴行脅迫を加えていることが認められる。かような事実から他の共犯者は当初から強盜を共謀していたものであり被告人は本件犯行前共犯者が強盜を実行することを認識していたものと推認される。証拠によつて認定した事実に基いてなされた推認は結局証拠に基いてなされた認定であつて單なる推測ではない。しかも被告人は他人の強盜の実行を認識しながらその勧誘に應じて屋外で見張りをしていたのであるから強盜の共同正犯としての責任を負ふべきである。
論旨は理由がない。